朝を行くか
オイタル

見慣れた風景に
「私」を当てて直線を引いた
直線はそのまま霞む山陰に沈んだ
屈曲する田んぼの畦道
わだかまる晩春の光線

 ときおり風は
 定規を重ねたように
 直角に地上へと吹き降り
 鳥は透明なコンパスに凭れて
 張り出す翼の先に命の輪郭を刻む

薄い朝へと向かう朝
けれどもとにかく
朝は朝
長靴に潜り込んだ小石を探って
さあ 行くか

 見慣れた玄関に
 ずぶ濡れの野菜を並べた
 とりあえずのマスクで
 耳裏もかぶれた
 頭上に潜む太陽の冠がつぶれる

遠くから銃撃
太った首と痩せたこめかみ
 (どっからが本当でどこまでが嘘か)
 ( 田園を行く直線は本当のはずか)
柔らかに煮込んだ虚実をすすって

今日よ 始まれ
誰も見ていないのを良いことに
「ちくしょう」の一言を
曲がったストローで諦念の
青いジュースでも飲みほしてしまうか



自由詩 朝を行くか Copyright オイタル 2021-04-19 20:35:20
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