死んでないもん
入間しゅか

あんな、人が死ぬって全然きれいやないねんで、じいさんの葬式でも、ばあちゃんの葬式でも、どっちでも思ったんやけど、棺の中のご遺体をじーっと見てたらな、蝋人形みたいで、魂がないと人間ってこんな薄いっちゅうか、作りもんみたいちゅうか、ものみたいになんねんなってご遺体に対して思うんはちょっと不謹慎で、じいじ、ばあばごめんやでって合掌しながら言うことちゃうなって思ったら、結局何を思いながら合掌すんのが正解かめっちゃ考えんねん、そしたら焦ってきて、頭がかゆいような、手が落ち着へんようなへんてこな気分になんねん、まだちっこい姪っ子たちもな、マネして合掌しよんねん、余計焦るやん。
ほんで、駅で電車待っとったんやけど、人身事故で遅延がでよんねん、そん時なんや知らんけど、白線の内側へお下がりくださいの白線の内側で合掌したんよ、合掌したら自分が卑怯もんな気いしてきてん。
あんな、改札出たとこで遅延証明のうっすいペラッペラの紙受け取るやん、この紙は死んでないもんの特権やで。

そないなことばっか考えてるから
いっつも焦って合掌すんねんけど、
じいじ、ばあばの遺影はずっと笑顔やねん。


自由詩 死んでないもん Copyright 入間しゅか 2021-03-25 18:30:30
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