◇レキ

幼さは
蕾が花になることを知らない

蕾を一つ一つ摘み取って
分厚い本に挟む
毎日少しづつ色あせてゆく

蕾の押し花を
手に取り飽きもせず眺める

昼間のまどろみの中
手の力が抜けてゆき
蕾はぽたりと落ちた





花の夢を見る
時間が満ち満ちた頃
花は咲くのだ

手折り 花瓶に生ける
豊かに匂い立つ花は
しおれることを忘れたかのようだった

花は部屋の暗がりにくっきりと映えた

朝方 目が覚めて
寝転んだままの部屋の隅に
空の小さな花瓶





種を蒔いた
丁寧に世話をした

小さな草が生えた
水をやると陽射しに水滴は
希望のように反射し光った

蕾は出来なかった

夕方 枯れゆく草に
耽ったように水をやる


自由詩Copyright ◇レキ 2021-03-24 00:24:03
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