透明なブルーと荒野
道草次郎

雪見障子からの陽は記憶している

あばら家の

たじまはるの中庭には

ミドリガメと田螺と湿っぽいツワブキ

があった

近所の原っぱでは

よく

空がひっくり返った

どこもかしこもクローバーの匂いがして

転がると春になった

も一度転がれば

猫にもなれた

ある日

図書室から帰ってきた(本物と信じていた)兄は

他人のようだった

和室の黄ばんだ畳に落ちている栞は

駱駝の瘤か

薊の棘

のようだった

何度目かの青い春

初恋の人の髪は濡れていた

夢精は

突如その晩におとずれ

初恋の人の髪は

それ以来石化してしまった

バスケットシューズの音に

胸を締め付けらながら

夢想でとんでもなく卑猥な事もした

それでも児童らは

絵本のように

ペットボトルロケットを打ち上げた

校庭は

時々

カザフスタンの荒野となった

児童らは

夢見る羊のように

何処かへ

走っていった


自由詩 透明なブルーと荒野 Copyright 道草次郎 2021-03-19 20:50:37
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