くそみたいな世界でお茶を濁す的なちょっとしたかきなおし
よんじゅう


きみのおでこはとがっている、おやすみというたびに、やだやだされて、それはちょうど夏の虫だったから、かけちがえたボタンが、蝉のようにぽっくり病だ、ぼくはきみを目覚まし時計とまちがえていた。
縞模様のパジャマだった、水墨画のようにきみをおもい描けば、うすく引かれた瞼がひだり耳までのびて、ひかりを帯びた。旅客機のかたちで、ひかりの先に。旅支度はいらないから、まずはしわくちゃになった星空に手を伸ばす、きみの足をポークビッツだとばかりおもっていたぼくはかに座です。


海岸堤防の階段_蹴込みの両隅は黒ずみ_時々白く濁る_ぐんぐん駆け上ると_誰も走ったことのない_空まで続く巨大なハイウェイが現れる_振り返るとせり上がった家並みに浮かぶ_エンジンの搭載されていない六畳一間の船底に_大波で遭難したきみが眠っている_今夜も朝方まで救難信号を送っていた_ぼくはひるがえり_砂のひとつも色のない波打ち際まで駆け降りる_おもちゃの漁船が水平線でハイウェイと交差する間際_釣り人に釣り上げられて岬の向こうでふいっと消えた_しらみはじめた空で解体された星座群がそのあとを追う_夜が溶け墨汁のような海に_ぼくは飛び込んだ。

指先にひっかけていたハイカットから点々と海の匂いを垂らしながら帰ると大家さんに見つかった、きみのポークビッツをかじるイメージで、大家さん、おはよう、砂まみれのジーンズとTシャツを流し台に放り込んだら、どこにも飛び立たない旅客機は疲れ切っていた、この小さな部屋に七月が溢れて息もできない多くの蟹が、船底で泡をふいている。


自由詩 くそみたいな世界でお茶を濁す的なちょっとしたかきなおし Copyright よんじゅう 2021-03-18 20:38:44
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