あかり くらがり
木立 悟






鏡を上に向けすぎた昼
映らない
何も
映らない


雪が径をすぎる
さかな ふるえ
背びれ 夕刻
自ら 光の個のほうへ


応えをしまい
さらに しまう
湯は冷め 鉄は重なり
氷の川に橋を架ける


雨色の帆船
造られた冬
足跡はつづく
背の群れの坂


空から文が落ち晴れになり
読めずに返して雨になる
だが何も悲しむことはない
水たまりを踏まずにゆくがいい


径のくぼみ 樹のくぼみ
あらゆるくぼみに波は還り
空の幕を繰り返し引き
音を音に泡立てつづける


午後の川底 
鳥の発つ音
ひとりになるもの
ひとつに在るもの


排気口から生まれる鴉
二羽めが一羽めを見て笑う
夜に近い左目が
あまりしないまばたきをする



















自由詩 あかり くらがり Copyright 木立 悟 2021-03-12 10:06:06
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