気配を交わす
塔野夏子

気配を交わす
凪いだ水面に立ちこめる霧のような
気配を交わす

かたちあるものは
言葉にしたものは
どんなにいとおしくても
見つめつづければ

 シュ

 ル
  ト
 崩
  壊
してしまうから

気配を交わす
交わしていると気づかないほどの
気配を交わす

かたちにならないように
けれど途切れないように
気配を交わす
解く術があらかじめ失われた暗号のように

いつか互いが
気配だけの存在となる日まで




自由詩 気配を交わす Copyright 塔野夏子 2021-03-11 16:17:43
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