記憶のふるさと
st

人間の記憶というものは
とても不思議なものだ

記憶のふるさとを探しに
人間の体のなかへと旅にでる

(脳への旅)

おおかたの記憶は

脳にある記憶の倉庫の
無数の抽斗のなかにあるらしい

ほとんどの記憶は
睡眠中に整理されて

無数にある抽斗の
該当するところに
仕舞いこまれる

また
よくよく考えると

脳の記憶の倉庫の抽斗に
意識してアクセスするには
時間がかかり

スポーツなどの
瞬時の反応を必要とする
無意識の動作の場合

その記憶は

脳の別の場所にあるとする方が
正解のような気がする

いわゆる体が覚えているという事になり

具体的にどの場所かは
はっきりとはわからないが

体で覚える記憶が「手続き記憶」として
大脳基底核や小脳が関わっているといわれている

しかしこの脳の他にも

いろいろな場所に記憶が
存在しているといわれている

(臓器への旅)

信じられない事だが
臓器が何かを記憶しているらしい

移植が盛んに行われた結果
数々の事例が報告されている

心臓を移植したら
食べ物の嗜好が変化したとか

心臓が記憶するものがあるらしい

(細胞への旅)

コロナなどに対抗するワクチンでは
免疫記憶と
その記憶細胞というメカニズムがある

細胞たちがある期間は
前回の感染の記憶を
維持できる事を利用している

そもそも免疫ということ自体が
驚くべきものであるが

これは異物を識別する
細胞記憶とも関係している

細胞記憶とは
各器官・組織へと分化した細胞たちの
自分がそのどの部分なのかの記憶で
細胞の1つ1つが異なる記憶を持つ

これは先天的で永続的なものである

他方
免疫記憶の記憶細胞たちの
前回の感染の記憶は
後天的で一時的なものとなる

細胞たちも記憶するのだ

(遺伝子への旅)

さらに細かくなって
DNAやRNAにも記憶があるようだ

プラナリアという日本にもいる虫では
記憶は脳の外にあるという

意識や記憶はすべて脳に宿るもの---ではなかった

驚いたことにこの虫では

後天的に学習した行動が
RNAに記憶され
親から子へと受け継がれるという

この虫のゲノムには
ヒトゲノムとほぼ同数の遺伝子があり
人間にも起こりうるという


何という恐ろしい ? 旅だっただろう

記憶のふるさとは

神秘の霧のなかにある






自由詩 記憶のふるさと Copyright st 2021-02-26 04:19:47
notebook Home