四月
大覚アキラ

四月とはいっても
まだ肌寒い明け方の空気の中
酔っ払ってるふりしてビニール傘振り回しながら
お初天神あたりを踊るような足取りで

そうやって
無理やり気持ちに火を点けて
疲れてるのとか
寂しさとか
やりきれなさとか
明日からの仕事とか
そういうの全部
塗り潰してしまいたい
真っ白に
塗り潰してしまいたい

そうか
もう四月なんだな
ついこの前
正月だったのに
いつの間にか四月になってたんだな

そういえば
おまえと最後に会った
あの夜
あれも四月だった

何年前のことなのか
指を折ってみなきゃわからないほど
おまえは遠くなって
目を閉じてみても
おまえの
笑った口元とか
ちょっと首を傾げた時の肩の辺りの感じとか
困った時に見せるうつむき気味の目線とか
前髪を掻き分ける指先の薄いピンクとか
そういうディテールばかりがぼんやりと浮かんで
決して全体として像を結ぶことはなくて
もう二度と触れることが叶わないのを
また思い知らされる

だから
四月は嫌いなんだ

乾いた笑いが唇からこぼれると
見ろよ
ほら
吐く息がこんなにも
白い

もう
四月なのに


自由詩 四月 Copyright 大覚アキラ 2005-04-21 00:45:07
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