On the Hill
墨晶

「閉じこもっているべきではない。もっと外出すべきだ」と云うのがお姉ちゃんの意見なんだけど、ぼくの散歩はいつだって大変だ。
 ビルを壊すから尻尾を振り回してはいけないこと。子供や老人を踏み潰すからちゃんと下を見て歩くこと。いちいちビックリして眼から光線を出さないこと。あくびとともに焔を吐かないこと。
 丘の上で、やっとぼくたちは、寝っ転がってホッとするんだ。
「お姉ちゃん、世界がすべてどこまでも、こんな緑の丘だったらいいのにな」
 ちょこんと僕の肩の上でハーモニカを吹いていたお姉ちゃんは云う。
「みんながアンタのこと、悪い子って云ってるわ。
 でも、あたしがアンタを
 守る」
 お姉ちゃんの髪の毛が風になびいてる。
 
 


散文(批評随筆小説等) On the Hill Copyright 墨晶 2021-02-14 08:35:40縦
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