だいたい俺は卑怯で醜い人間だ
道草次郎

こころはなんて無様なんだろう
夕方になってようやく一息つけるなんて
ぼくはとんでもないろくでなしだ
みんなが活動してるときになんにもしてやしない

たしかに詩というものを以前よりはちゃんと考えるようになったが
だからといって生活はよくならない
はめつしかないのだ
じっさい金がないのだ
そして金がないよりもっとひどいのは
憂鬱がどっかへいってくれないこと
それにしてもぼくという存在はまるで不快なごみのようだ
きょうだって何度もそう呟いたんだ
じっさいに声にだして

何はさておき
仕事をさがさなきゃあならない
ぼくはあとがない
詩はすばらしい
しかし働かなきゃぜんぶがだめになる
なあ
ぼくの言葉の精度は
笑っちゃうほどわるくなった
だんだんみにくくなる自分がわかる
ぼくはそれでもまだなんとか体はうごくし
しんだって這ってだって
ごみや汚物を投げつけられたって
仕事をして現金をえなければならない
そうしないとやしなえないのだ
やしなうものがいないものをやしなうのは
このどん底みたいなぼくだけなのだ
そういう事実の棒が一本あるきりなのだ

詩はすばらしいよ
でも
ぼくは詩がかねにならないのを知ってる
だから
やっぱり現金をつかみたいのだ

ぼくはとてもおおくのまちがえをしてきたし
とてもおおくの期待を反故にした
あとは負債を返済するだけのじんせいなのだ
それはよくわかってる
しかしそれもいい
それがじんせいならそうするまでだからだ

ぼくはひとまず
働き口をみつけ
それから送る金を掴まなきゃならない
泥のついた手で男らしい目をぎらつかせじぶんより弱いものをすら
金のために嬲ることもいとわないだろう

げんじつをみろ
それが現実というものだ
それが生きるということだ


自由詩 だいたい俺は卑怯で醜い人間だ Copyright 道草次郎 2021-02-12 20:39:15
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