ジョバンニの朝
妻咲邦香

星の砂巻き上げて海沿いの駅走り過ぎる
2つに折ったトレイルバー、大きい方を黙って差し出す
肩先にまだ残る燐光、振り払いもしないで
先頭車両はまだ寝てるみたい
窓を開け風を誘い込む
飛ばされないよう帽子を押さえ
足下で綿毛がくるくるとまるで子供のように
  もう行ってもいいかな?
  もう行ってもいいかな?

お喋り夢中になり過ぎて話は何処も行き止まり
呆れて見てる君のチャイム鳴らし続けて
大人の振りが楽しかった時代
壊れたように泣いたことも
背凭れに身体預けて思い出した頬杖という名の魔法
  もう行ってもいいかな?
  もう行ってもいいかな?

こうして向い合わせで過ごす最初で最後の旅
気まずくていいからもて余す時間が欲しかった
枕木が優しく見えるのは誰もが等間隔だと信じているから
自分たちでさえも ほらね
懐中時計が止まってそろそろ星祭りの時間

カムパネルラによろしく伝えて
もう振り返ったりしないから
生命の正体ってね99%は夢
膨らむのを止められなくなった夢そのものなんだと
君が教えてくれたんだよ
  もう行ってもいいかな?
  もう行ってもいいかな?


自由詩 ジョバンニの朝 Copyright 妻咲邦香 2021-02-07 23:15:34
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