もうひとつ
妻咲邦香

もしもあの時
もうひとつの道を選んでいたら
今の私に出会えただろうか?

道しるべのない道の途中
知らずにすれ違う自分に
どんな声をかけただろうか?

もしも今の私より幸せそうだとしたら
どんなにか心が安らぐことでしょう
幸せなもうひとりの私がいることで
どんなにか救われることでしょう

「はじめまして」
「こちらこそ、はじめまして」
大切なものは何ですか?
いつもそばにありますか?

嬉しい事そのままで
悲しい事そのままで
悔やめるうちはまだ
幸せなのかもしれない

「それじゃお元気で」
「身体に気をつけて」
笑顔でお辞儀しながら帰る
それぞれの待つもうひとつの場所へ

嬉しい事そのままで
悲しい事そのままで
二度と会うことはたぶんないと
知りながら


自由詩 もうひとつ Copyright 妻咲邦香 2021-02-03 01:06:53
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