冬の扇風機
ベンジャミン

いつの間にか春だった

去年の夏に出した
扇風機は秋を過ぎ冬の間も
僕の部屋にあって
まるで使い道もない無駄な存在として
小さく佇んでいた

僕は
冬の寒さに凍えながら
扇風機を回したことがある
どうしょうもない夜に
涙を乾かしてくれた
おまえは僕みたいに必至だった
加熱したモーターから
わずかに感じられた熱が
どこまでも暖かかった


いつの間にか来た春に
僕は静かに動き出そうとしている
胸の奥に
あのどこまでも深いぬくもりを感じながら

おまえの生み出す
そのやわらかい風に

うまく乗れたらいいと思っている

   


自由詩 冬の扇風機 Copyright ベンジャミン 2005-04-20 14:59:11
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