リズム、グルーブ、その連続
ホロウ・シカエルボク


食虫植物が翅を休める虫を絡め取ってゆっくりと飲み込んでいく映像が脳裏でずっと繰り返されていた、一度首を刎ねられてまた繋がれたかのように身体はどこかバランスを欠いていた、信号を伝達する回路がどこかでイカレている、それも、おそらくは重要なセクションの一部で…眠り過ぎたあとみたいに視界はぼんやりと曇っていたがどちらかと言えば眠りは足りなかった、ベルトコンベアの上で定期的に刃を落とされるみたいに夢は寸断された、おかげで記憶までが少し曖昧になっているように思えたけれどそれは今に始まった話じゃない、人生におけるモチーフの問題—そいつにこだわる限り仕方のない話だった、ヒーターが照らしている部分は暖かかったけれどそれ以外は凍りついていた、インスタントのコーヒーを一息に飲み干したらサーモグラフィーを体感しているみたいにその経路をはっきりと感じることが出来た、おそらく俺は誰にも判らないように語ることが上手過ぎる、でもそれこそが俺がやり続けてきたことの証なんだ―途方もない時間をかけて追い求めてきた人間は遅かれ早かれそういう場所に辿り着くものさ、スタイルなんてひとことで片付ければ済む話かもしれないけれどね…でも俺よく言ってるだろう、語りつくせないものを語るために生きてる、それは決してひとつの言葉で片付けられるようなものじゃないのさ、回りくどく語れば語るほど素直に正直な形になる、そういうもののために俺は書いている、それは底なし沼に潜るようなものだ、それは畏怖すべき行為のように思えるかもしれない、でも逆に言えば、それは潜り続けることが出来る場所なんだってことー片付けるのって、あんまりいいことじゃないよ、少なくとも俺に言わせればね…それはリズムを失う、それはグルーブを失う、それは思考を失う、それは連続を失ってしまう、一生は切り取って整理している間にも先へと進んでしまう、並べ終わることにはリアルだったものが石ころのように思えてしまう、いいかい、大事なことはひとつだ、尻尾を追いかけ続けることだ、それは真実かもしれない、あるいは実感かもしれない、ただのスピードかもしれない、もしかしたら取るに足らないものかもしれない、だけど一度追いかけ始めたのなら決してそれを止めるべきじゃない、もしかしたら自分の鼻先に吊るされた餌がなんなのかなんて話はどうでもよくて、ただただそいつに釣られて動き続けることが大事なのかもしれない、リズム、グルーブ、その連続、精神と魂はそれによって再生され続ける、人間は半永久機関だ、動力は自分自身のすべてだ、それが自己表現の真実だ、少なくともそうすることで俺は生命を先へと進めてきた、無自覚にならず、無意識のままに…もちろん、そう、そんなものに浮かれていなければ、こんなふうに身体のバランスを失ったりすることはないかもしれない、回転数が変わり過ぎるのさ…だけど、だからこそ、より変化をもとめようとするのではないのか?俺はリズムに固執する、精神にも、肉体にも、余計な脂肪なんか少しも身に着けちゃいないよ、それは判断を曇らせるからねー醜くなって、口先だけで武装し続けるなんて御免だよ、あらゆる信号は正しく流れなくちゃいけない、あんたの詩は放電だって言われたことあるよ、上手いこと言いやがるって思ったぜ、だからあんまり自分じゃそう言わない、そいつほどうまく使えそうにないからね、どんな手段だって試してみることさ、手段なんてものにたいした意味はない、内容なんかどうだっていい、スタイル?くそくらえだ、自分自身の現在をどうすれば一斉にぶちまけられるのか、懸命に考えてみることだ、判って欲しいなんて考える必要はない、心配ない判るやつには判るんだよ、理解を念頭において話を進めようとしたら進化なんて絶対に手に入れることは出来ないぜ、キャンペーンをやってるわけじゃないんだ、これはある意味で人生の動機であり、結果であり、指針なんだよ、迷うヒマがあったら一度顔でも洗って、いまの自分に出来るすべてを継ぎ込んでみるんだね、未来やイズムなんて認めてもらうためにあるわけじゃないんだぜ、知るためにあるんだ、知るためにあるんだよ、俺たちは知るだけ、ただ知るだけ、そうすればきっと、また新しいフレーズを綴ることが出来る、人生の続く限り…。



自由詩 リズム、グルーブ、その連続 Copyright ホロウ・シカエルボク 2021-01-12 22:49:50
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