人間は気持ちが悪い
花形新次

生身の人間は気持ちが悪い

高校のときの
国語教師は定年間近の
婆さんだったのだが
いつも両手一杯に荷物を抱え
学校の行き帰りをフラフラしながら
歩いていた
その婆さんは俺の担任なので
身体のデカイ俺をみつけると
いつも呼び止めて荷物を
持ってくれと頼んだ
「いつも何持って来てんだよ
どうせ使いもしないのによ」
と文句を言いながらも
婆さんが大変そうだから
職員室まで運んでやっていた

婆さんの授業はワケわからないもので
真面目な奴は真剣に嫌っていた
俺は授業中はジャンプを読むか
将棋を指していたので
別に何とも思わなかった

そんな俺に
ある女生徒が
「あいつは、点数欲しさに
あの先生の機嫌を取っている」と
言いふらしているという噂を聞いた
教えてくれた俺の仲間は
「高校で点数欲しさってなんだよな
ああ、おまえの場合は赤点回避か、ガハハハ」
と頭のおかしな奴がいるもんだと呆れていた

確かにガリ勉で
点数取るのが上手い奴らが多いところだったが
まさか嫌われ婆さんに手を貸したのまで
点数取りのためだと
穿って見られていたのを知って
ゾッとしたのを覚えている

しかも優しい人ねって
女にモテようというのが魂胆だなら分かるが
最初から女目当ては有り得ない的に
扱われたのがもっとショックだった

人間なんて
裏ではどんなこと考えてんのか分からない
気色の悪いもんだと強く思うに至ったエピソードだ

今のネットのやり取りだって
一皮剥けば魑魅魍魎蠢く世界だぜ

あー、気持ちが悪い





自由詩 人間は気持ちが悪い Copyright 花形新次 2021-01-07 22:44:26
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