明け方の空に夕暮れの空に
こたきひろし

あの巨大地震に襲われたのは昼の二時頃だったかな
この国の民は地震慣れしてるから
最初は またかって軽くみてたけど
揺れが凄くておさまらない

俺は
その時働いていた製紙会社系列の工場の中で一つの機械相手に二人で共同作業していた
突然の予期せね自然災害に工場内は騒然とし始めたが
避難しろ!の場内アナウンスは何もなくて
辺りに積み重ねられた物がバタバタと倒れ出した頃にも
俺と同僚は必死になって何かを守ろうとしていた

あの行動はいったい何だったんだろう
今でも謎で解明できていない
その内に聞き覚えの有る声が外から激しく怒鳴ってきた
その場所はドア一枚向こうに外があった
勢いそのドアが開けられて
 何やってんだはやく逃げろよ!死んでもいいのか!

俺たちは慌てて避難した
広い場所に沢山の作業員が集まっていた
余震が何度もあって工場内の高い建物がしなるように揺れていた

生涯で初めて命の危険を感じた
生きた心地がしなかった

工場内の一隅から煙が上がり火の手も見えていたような記憶もあった
あれは妄想かまぼろしだったかな

そんな中で 皆携帯で電話を試みていた
俺も家族の安否が心配になり同じ事をしたが繋がらなかった
ここにはいられない
一刻もはやく自宅へ帰らなくてはと焦りを感じ始めた頃に
工場長が全員の帰宅をメガフォンで指示した

俺たちは作業服のまま駐車場に向かい個々の車で敷地内から道路へと出て行った

東北の原発が津波でやられ、多くの人間が津波の犠牲者になった
その有り様を俺は家族と一緒に自宅のテレビで見た
俺も家族も家も無事だった
水道も電気も止まり不便な日常から解放されてからやっと
フクシマの惨状をテレビで見た

人間って怖いな
そこにはシアワセを噛みしめる自分がいたんだ

人間って怖いよ
ほんとうに怖い


自由詩 明け方の空に夕暮れの空に Copyright こたきひろし 2021-01-03 08:18:12
notebook Home 戻る