いってらっしゃい/即興ゴルコンダ(仮)遅刻
こうだたけみ

イッテラッシャイ、は留まる人の台詞。踏み出したいのにまだここにいて。動かなければそうと気づかれないまま緩やかに死へ向かえることさえ知っている。駅ビルの、安っぽいステンドグラスの中が一瞬だけ光に満たされて眩んだ目。もう何千回と通り過ぎているのになぜ今なのか。クリスマスの次の日はお正月、みたいな世間の忙しなさに急き立てられる。体は、生まれてこのかた無数の今を積み重ねて出来上がる。いともたやすくバラバラになるくせに、どうやら戻すのはむずかしいらしい。閉店後に手に入れたカットケーキなら零時を回ってからと五時間弱の浅い眠りのあとで消費されました。されました、そんな人ごとみたいにって? 当然でしょ。人ごとだもの。レモン柄のマイバッグ。近所の24hスーパーで一番上等なインスタントコーヒーを買って帰る。等しく、朝を迎えに行く。


自由詩 いってらっしゃい/即興ゴルコンダ(仮)遅刻 Copyright こうだたけみ 2020-12-28 01:49:55
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