低愚脳詩集
道草次郎

低愚脳詩集

1「だろう」

こころがはじまるときは
朝のようだろう
こころがおわるとき
夜のようだろう
昼はいまだ
だから
あかるいんだろう


2「なるようになる」

つぎはプランクトンだ
プランクトンになったら個性なんて気にしない
プランクトンのつぎは細菌
細菌なんて何がなんだかわからんだろう
細菌のつぎは原子
原子なんて有ればいいんだ大したことは無い
原子のつぎはクォーク
クォークのつぎはひも
ひものつぎはさあ何だろう
なんでもいいや
なるようになるんだもん


3「猫釣り」

コーンスープに
焼いたフォカッチャひたして食べたい
寒い北風吹くこんな夜は
そんなムクムクした気持ちになるものだ
クリーム色のテーブルクロスの上で
猫のみゃーと遊ぶ
玩具の魚つけた釣り糸たらして
みゃーをつる
食らいついた、みゃー
ぶら下がって離さない、みゃー
赤色が伸縮する
橙色が凸凹する
みゃーは
まだ、ぶら下がったまま


4「色曜日」

月曜日、空は紫
火曜日、空はピンク
水曜日、空は黄色
木曜日、空は緑
金曜日、空は真っ白
土曜日、空はオレンジ
日曜日、空は青
だったらいいな、と思った

5「東山魁夷の絵」

めり込んだ命が逆さにぶら下がる
路程に
sympathyを感じ
手網をひく
えい

っと
未明
駆け抜ける純白な駿馬
風の如し


6「なんだこの退屈な詩は」

身を横たえていても
不安な時もある
逆に
嵐の中にいても
安心な時もある
心って
不思議だ
心を御することができたら
こわいものなしだ
こんな不思議なものが
不思議でないものからできているとしたら
それはじっさい
もっと不思議なことだ
だから
思うけれども
不思議でないものなど
ないのだ
あってもなくても
だってどの道
不思議なんだもの


7「鹿渡り」

バラモンの
木の椀
柳に
おちる小雪
耳で
河を渡っていく鹿
乳がゆ

仏陀も
生まれない惑星



8「当たり前」

ただ生きているだけでいい
ただ存在しているだけでいい
存在していなくてさえ
いいのだから

9「四季」

夏。
草が
そよそよと
軽くなることを
まず
思い出そうとして
いた

秋。
麦わら帽子の
黒ずんだ紐をあらって
暗くなるまで
サンショウウオの事を
考えたりして
いた

冬。
ツキノワグマの
親子と
出くわし
談合
した

春。
剥離剤で
指紋を消して
惑星で一番素晴らしい
夕焼けを
みた


10「無題」

時は間違いだらけで過ぎていった ある時は 何本もの錯綜した脚がせわしくタップダンスを踊るかのように またある時は能の演者の一足目の踏み出しのように どの時どの場面で踏み間違えたかはもう分からない しずしずと今は筆箱の中を整頓している 出来ることはひどく限られている絶望を寄せ付けないように 脇の下にいつもニンニクを挟んでいる 詩を書こうにも その才覚がなく 詩と散文の領分を弁える謙虚さもない

11「ロカンタンてだれ?もしくはなに?」

ロカンタンは
何を言いたかったんだろう
世紀はこのあとも
世紀の上につもってしまうのに


自由詩 低愚脳詩集 Copyright 道草次郎 2020-12-24 20:58:31
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