あのヒトこのヒトそのヒト
こたきひろし

あの世の方角に
足も目も向けたくはない

この世の果てはどのあたりで
この世のお終いにはどんな音色のファンファーレが鳴るのか
何も知らされないまま
物心ついたらこの舞台に立っている自分に気付かされたんだ

ある朝
目が覚めたらガランとした空間の中にひとりぼっちだった
そのときに
私は私で私以外の何者でもなくてさ
私以外の何者にもなり得ない存在なんだと思い知らされたんだ

自我の目覚めってやつさ
すると何処からかあらわれたんだ
女がひとり
母親づらをしてさ
それから男がひとりあらわれたんだ
父親づらしてさ

あのヒト
このヒト
そのヒト

みんなヒトが公平に産まれて
平等に育ったら
おそらくこの世の中ただじゃすまなくなるんじゃないか

遺伝子は優性と劣性があるし
ヒトそれぞれに
出自に差異も生じる

そっから始まる競争だからさ
ハンデの違いを皆それぞれに担がされてるのさ

そして
たった一回こっきりのレースなんだ
やり直しはなしなんだよ

泣いても
笑っても
喚き散らしても

そうさ
たったの一回なんだ

ヒヒヒヒーン





自由詩 あのヒトこのヒトそのヒト Copyright こたきひろし 2020-12-23 00:10:17
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