雨無白音
木立 悟



宝という宝を
隠してまわる
乳とくちびる
紙の拘束具


科学から きらきらと
こぼれ落ちるもの
分度器と海辺
浪あおぐ 風あおぐ


噛みつかれないよう
互いにふわふわ離れている
やわらかな硝子が
夜風を映してたなびいている


光の輪をめぐる光の輪
降りそそぎ 地に跳ねかえり
指をつかみ 壁の上に立たせ
壁の向こうを見せる


わたしは虹 わたしは左手
ただそこに置かれた枕
痛みを癒すことのない
ただそのままの眠り


涙をぬぐい 星を蹴る
枝葉は繁り 水をうたい
風雨のはざま 見えないもの
繰り返し降る 見えないもの


減りつづける鉛を銀で埋め
曇は曇を拡げつづける
手のひらに手のひらに
あふれる声


樹を倒し 樹を積む音が空に重なり
径に雨音を降らせている
音の後に 径は白くなり
やがて来る別の白を 招いている


















自由詩 雨無白音 Copyright 木立 悟 2020-12-14 09:14:10
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