八季巡夢
木立 悟





雨粒が描く横顔
花弁 花芯 青空 花嫁
緑の浪に吼えるもの
朽ちた舟に咲く光の輪


星の渦のなかの横顔
誰にも到かない微笑
空は動かない片翼
分かれては出会う分かれ道


また泣いているのか
まだ泣いているのか
空を流れてゆく空を
窓の息が見つめている


陽がほどけ
鳥が生まれ
古い暦の裏に
不可思議な言葉が描かれる


額から逃げようとする絵を
なだめるうちに終わる一日
西を向く 東を向く
星は軽く 会釈する


ああそうだった そうかもしれないと
常に補いつづける夢の立ち位置
血の付いたカート 病院の窓
同じ階を巡る人々


この世のものでないものは
いつも昼の陽のなかに居て
鳥の影を浴びながら
空の何処かを指さしている


未明に降り来るひとつの色は
少しだけ誰かのうたに似ている
吹雪の手のひら 転がる思い出
午後に午後に染まりゆく


















自由詩 八季巡夢 Copyright 木立 悟 2021-01-01 22:58:30
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