淡哀しく雪が降る
塔野夏子

意識の表面に 皮膜のように貼りついた
夢を剥がす 淡哀しく雪が降る ログイン
ログアウト 扉の向こうに 景色をしまい込んだまま
日々は眠る ログイン ログアウト 小さな痛みが
星のように瞬く 淡哀しく雪が降る ひとりでに
頁は繰られてゆき 見えない手が なにごとかを
書き記す あるいは なにごとかを消してゆく
ログイン ログアウト 剥がした夢は まだそこで
うすく虹色に光っている 神話がすすり泣いている
子どもたちが 窓のふちから こぼれてゆく
淡哀しく雪が降る 夢を剥がされた
意識の表面を グレイの風が吹いてゆく ログイン
ログアウト 行方をなくした道が 宙を漂っている
扉の向こうに しまい込まれた景色から
声がする (アヴァロンまでは何マイル) 淡哀しく
雪が降る 紫色の重い幕が ゆっくりと
降りてくる ログイン ログアウト 幾重もの
ログインとログアウトの狭間で 夢を剥がされた
意識の表面が 疼いている (どこかに
インすることは どこかから アウトすること)
淡哀しく雪が降る 剥がした夢の
うすい虹色の光は 少しずつ褪せて やがては
それも 雪が覆うだろう (アヴァロンまでは
何マイル) ログイン ログアウト 日々は眠り
その眠りから生まれた夢が またいつしか
意識の表面に 貼りついてゆくのだろうか



自由詩 淡哀しく雪が降る Copyright 塔野夏子 2020-12-01 11:33:09
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