夜 迷 灯
木立 悟





暮れの空に 巨きな曇が
ひとつ浮かんで動かない
街を隔てる径のむこうに
家より高い鉄の樹がある


街へ 光へ
到くもの 到かぬもの
降りそそぐ 機械の星
花の星


視界の端に
いつもとまる赤い鳥
曇にまぎれ
何処かへ帰る


風のなかの噴水
霧のなかの松明
川の流れのなかから
魚のかたちの水を抱き上げるとき


灰と鉛の網目の風が
鳥の道を梳いてゆく
音が荒々しく音をたて
生と夢を連れてゆく


古い鋏を空にあてがい
新しい星座をつなぐとき
閉じていた窓が少しだけあき
誰かがのぞきこんでいる


空の辺に
風が灯り 消えてゆく
やがて何処かへ去るものたちが
夢の切れ端を置いてゆく


煙る光 蜘蛛の糸
窓の内側をなぞる手のひら
眠りに降り来る雪や雨
夜ゆくものらを照らし出す


















自由詩 夜 迷 灯 Copyright 木立 悟 2020-11-29 20:35:52
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