さらばさよならグッバイ
こたきひろし

 産まれた日の事覚えてるか?
 母親の窮屈な産道通り抜けてその股間からこの世界に
 コンニチワしたときの事さ
 産声あげてへその緒切られて湯で羊水洗い落とされたときの事さ

 そんなの覚えてる訳ないだろ
 脳みそまるっきり機能してない筈だからさ
 政治家も財界人も一般人も普通じゃない人も
 誰もかしこも一緒だろ

でもよ
そっからみんな出発しても
優性遺伝と劣性遺伝の差異は歴然と存在するし
加えて出自は人それぞれ違うから
そっから既に公平じゃないんだよな
まして産まれた時代背景や環境はどうにもならないしさ

人間なんて可哀相な生き物なんだよ

 話しは全く飛ぶけど
 俺の父親は変わった趣味を持ってたんだよ
 家の近くを流れる川から墓石になりうな平べったい大きな石を探して来ては
 石に名前彫るのを趣味してるおおねだいじやんにに頼んで
 先祖代々の墓地にご先祖様の没年月日と名前を刻んで並べていってたのよ
 そんなかには南方の島で玉砕戦死した弟や
 最初の嫁さんと一緒に亡くなった子供の墓石もあったな
 何でも死産して母子共に亡くなったらしい
 俺の母親は後妻だった訳さ
 母親は五人産んで俺が五人目
 五人目で打ち止めにしたんだな
 何とも因果な話しだよな
 先妻が無事だったら俺を含めて五人は産まれてなかったんだからよ
 何とも因果な話しだよな

 


自由詩 さらばさよならグッバイ Copyright こたきひろし 2020-11-29 00:29:20
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