私だけじゃなくて
月夜乃海花

何千回、何万回
「死にたい、死にたい」
と私はずっと想い続けた

初めて母に「死にたい」と言った小二の春
「じゃあ、一緒に死のうか」
あまりに簡単な返答だった
人の命は鳥の羽よりも軽いのか
それ以降、人には「死にたい」と言わなくなった

だから、ずっと人前では笑顔で居ることにした
「育て方を間違えた」
「全部お前のせいだ」
中学で不登校になっても
高校で虐められても
成績が上がらなくて土下座をさせられても
ただ這いつくばって生きていた
大学では教授に
「君、社会人としてこのままじゃやっていけないよ」
と何十回も言われ続けた

何度も包丁と一緒に寝て
川の前で佇んで
ひたすら薬を飲んだ
それでも生きていた

社会人になって、一年は保った
でもあまりにも仕事量を増やされすぎて
身体が壊れた
総務部に
「今まで『死にたい』と思ったことはありますか?」
と言われた時に無言で首を振った
誰にも理解されないと感じたから

実家に帰ったら
両親は「頑張ったね」と言ってくれた
まるで今までの子供の頃の私は居なかったかのように
数ヶ月後、結局父に
「全部お前のせいだ」
と言われた

何処にも居場所が無くてずっと泣いていた
この二週間が一年のように感じた
そして今は父とは別の住処に居る
そう、母と共に
そして、母もかつて辛かったということを改めて知った
「私たち同じだね」
なんて言いながら泣きじゃくった

辛いのは私だけじゃなかった
生きる人みんな辛いんだ
きっと父も辛いんだ
それでも人は生きている
生きなければならないのか
その答えはまだわからない

でも答えが無くともやりたいことをやりたい
ただそう思った



だからここに記録する。
私は生きている。


自由詩 私だけじゃなくて Copyright 月夜乃海花 2020-11-17 23:19:19
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