初めての告白
板谷みきょう

中学の卒業式を終えて
通学バスに乗って
其々が停車場で
降りていく

終わり頃に降りる生徒は
後ろの席に溜まっていた

卒業証書の入った緑色の
筒を片手に
高校への夢なんかを
語っていた

小学校から
英語の塾に通ってた
加工場の娘の島さんや
自転車屋の渡辺のヒロちゃん
白川さんや亀谷君
それに
くせ毛の可愛い志村さん
みんな
別々の高校に進むんだなぁ
そう考えてたら
急に
もう二度と
会えないんじゃないかって
寂しい気持ちになってしまった

ボクが降りる停留所は
ボク一人だった

バスから降りる為に
後ろの席から
前の昇降口に向かう

志村さんの横を通る時に
「卒業したらボクと
付き合って下さい」と
言ってしまったのは
本当に二度と会えないと
思ったからだった

志村さんの困った顔と
どよめいてるバスの中で
ヒロちゃんが言った
「志村さん。亀谷君と付き合ってるしょ。」

あぁ。
そうだった。
付き合ってたんだ。
カーッと火照ってきて
頭がジンジンしながら
「それじゃ。元気で。」

そう言って振り向きもせずに
バスを降りた。

高校卒業後に通った夜間の
看護学校で志村さんと
偶然、再会したけど
話し掛けられもしなかったし
ボクも
気まずくて
声も掛けられなかったけど

その時も
可愛いくせ毛だった


自由詩 初めての告白 Copyright 板谷みきょう 2020-11-13 13:35:59
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