Avanti
服部 剛

詩人の友の「活動二十周年」を祝う
朗読会に出演した  

それぞれの闇を越えて、再会を祝う
ステキな言葉の夜だった 

トリの朗読をした彼が
最後の詩を読んだ後
客席の後ろにいたほろ酔いの僕が 
頭と頭のすき間から
「あんこ~る」の声を届ければ 
会場に手拍子は高鳴り
「しょうがないなぁ」と照れながら
彼はもう一篇の詩を、手にした 

その朗読で彼は
若くして世を去った詩人を惜しみ説教をした

「死んじゃうってことは、才能がないね」
「生きてるってことは、可能性だね」

それは金八先生を彷彿とさせる
語りであった

やがて朗読ライブがはねて
もう一人の出演詩人と、三人で
高田馬場のうまいラーメン屋の
カウンターに肩を並べ
味噌ラーメンにニンニクを少々入れて
レモンサワーをごくり、とやった

帰り際の交差点で
二人の肩に手を置いて
「三本の矢って、折れないから
 僕もがんばるからさ」

そう言った後、僕が以前に
「ぽえとりー劇場」という朗読会の司会をした
BensCafeの跡地へ行き
ひとり佇んでいた

(懐かしい、言葉の夜の賑わいと
 もういない幾人かの詩人の面影を視ていた)

コロナ禍の二十三時
すでにシャッターは下りていた
現在の店の名前は「Avanti」

暗がりに光るスマホで
僕は電子の辞書を引く
気づくとなぜか
しょっぱいものが目ににじみ、拭いていた

「Avanti」

前へ、前進、もっと先へ  










自由詩 Avanti Copyright 服部 剛 2020-11-07 23:59:24
notebook Home 戻る