石ころ飛んで来る
こたきひろし

餓鬼の時に
投げた筈の石ころがいきなり飛んで来た

 痛い!
俺の頬をかすめて皮膚が切れた感覚があった

果たして血が垂れたか垂れなかったかは
それを確かめる鏡がこの世界の何処にもない代物だから
解らない

何しろ
餓鬼の頃はほとんど善悪の判断持ってなかった
悪さしても罪の意識薄かった

たとえばカエル捕まえたら
平気で腹にストロー突き刺して
口から思い切り息を吹き込んだりした

そこには生命の尊厳なんて
欠片も感じてなかった

餓鬼の時に投げた筈の石ころが
何の前触れもなくいきなり飛んで来た
そして遥か彼方へと消えた

そんな事あり得ない
俺はどうかしてるのか
白日の夢でも見ているのか

俺はハッと思い出した

黄昏れても
俺らは遊んでいた
何をして遊んでいたかは思い出せない

誰かの家の庭で
男の子供ばかりで始めた遊びには
途中から誰かの妹も一人加わった

と言うよりは縁側にすわって眺めていた
その内に縁側で眠ってしまった
可愛くて短いスカート履いていた

その内に誰かが言い出した
言い出したのは小学校高学年で一番年上だったと思う

その悪戯の発案に他の子供らは渋々従わおうとする中で
一人だけ強行に反たいする子供がいた
勿論、女のこの兄だった

一番年長の子供が
 お前は黙ってろ!親には絶対言うな!見たくないならあっちにいけ!
声を押し殺すように言った
そして家の前の細い道から石ころを拾って来るとそれを持った手を振り上げた

俺も他の子供らも一瞬に凍りついた

すると年長の子供は何を思ったかこの俺の手に石をそっと握らせた
そして命令した
 お前が石をぶつけてやれ
俺は吃驚して震えてしまった

その後の記憶がプツリと消えている


自由詩 石ころ飛んで来る Copyright こたきひろし 2020-10-17 06:06:02
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