キジバト
山人

キジバトがアスファルトのすき間の
塩化カルシウムを求めてやってきては
車の気配に飛び立つ
その柔軟で頑強な胸筋は
うすく乾いた空気を捉えては
スノーシェードの向こうへと飛んでいく
その屈強な姿を
あなたは見たことがあるだろうか
中空でありながらも硬く軽い骨を持ち
自重の七割がたの胸筋で自らを空中へと飛翔させる
キジバトの眼球は点となり
無表情でありながら
必死に車の前から飛翔してゆく
体が塩分を欲しているが
完ぺきな肉体を持ち
激しい鼓動を打ち
空へと飛んでいくのだ
キジバトは逃げているのではなく
私の眼前でそのありあまるエネルギーを見せつけている
間違いの無い、完膚なき健康を披露し
そのはじける胸筋を見せつけている
キジバトは未来へと飛び
希望へと駆け飛ぶ
空は未だ鉛色で口は押し固められているけれど
キジバトの飛翔は沈殿した苦い泥を
いくぶんか吐き出させてくれる


自由詩 キジバト Copyright 山人 2020-10-03 07:58:59
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