伝わらなかったから、ちゃんと伝えたいという事
おろはげめがね

全然、夜にならないから、電気を消して、窓を全部閉めた。
長い間、どこへも行かず、誰とも会わず、この世の端っこの方で、人生が終わるのをじっと待っていた。
僕の人生はまだ始まったばかりだった。
以前、友達と呼べるのは、オズという男の子だけで、彼はとびきりの劣等生だった。
オズは、ひきこもりの僕をバカにしていたが、僕も頭の悪いオズをバカにしていた。
でも、お互い他に遊ぶ相手がいないので、たまに会って遊んだ。
僕の家で。
ある日、僕はオズに対して居留守を使った。
理由はなかった。ただ、居留守を使った。
オズはいつまでも帰らず、夕暮れは永遠に続くかと思われた。
全然、夜にならなかった。
その日、僕もオズも意地になって求め続けた。
僕らのいない世界を。
無言の攻防は続き、沈黙は世界を凍りつかせた。
友情は美しいばかりではない。
世の中には、こんな醜い友情もあるのだ。
僕は、驚いた。文字通りの世間知らずだった。
時が経ち、今、僕はオズとの友情を誇りに思う。
あの時、僕らは、綺麗でなかったし、取り立てて、汚くもなかった。
それなりに、ズルかったし、ズルくない時もあった。
色んなことを覚えたてだったな。
そして、ちゃんと生き残った。
ありがとう。オズ。


自由詩 伝わらなかったから、ちゃんと伝えたいという事 Copyright おろはげめがね 2020-09-26 13:31:20
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