秋の爆撃(自由律俳句)
道草次郎


ごめんというがいうだけの曼珠沙華

液体のよう月日げつじつ無碍ながらも初秋

薔薇の顔は神の刻限にはや棄てた

空をみてそらに対峙できずに

きづいたら何も無く泥だまり。花

どうしても。どうしようにも蓮の華

このみちのくらさはくらいかと問う月もなし

鬼に取りいる血の池の夢と朝飯何食わぬ

蟋蟀こおろぎ鳴かなくなり残夢

幽霊よりなま身なまなましくうらめしや

積読本枕にもならず歯でちぎる食む

貧乏ゆすりが知らず乗っ取る夜半よわ

こうこうとつき痘痕あばたも月

探されものの心地になり赤蜻蛉

ひかりのなかでひかるほどに黒く烈烈

池に落とさず拡がらず波紋は

事事が賽の河原の塔のいし

鯨として座礁死夢だかうつつだか

ヒカリゴケに観察者絶無もはや思想史

葉脈の空想か思想か判らぬ夕栄

あの虫の音に添ってそいはてて朝の芝

露となるものつゆとなりたがらず霧

歩きながら思い出しながらあるくになれ

眠いならねてみるねてみている自分はいず


俳句 秋の爆撃(自由律俳句) Copyright 道草次郎 2020-09-10 23:46:30
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