眩瞑
あらい

眩瞑


 氷菓子の浮力に勝てないから僕らは無意味に海に投げ出したまま、海月と出店の金魚を天秤に架けた。芒が空を掃除するなら今でも曇り空は描かれ、自由に泣いて暮れる陽に天の格子は充たされている。
 虹の彼方に往く為には の小噺だろう。

 例えば氷菓子の積み木で透けた4畳半のささくれをも彩図かせる深爪の合間に漏れた破れ目の襖からの喘ぎや、祖の灯に孵る残照の欠片とか、そんな安っぽい塗り絵みたいな原型が。
 そういえば 御伽の国に気体が詰まった希求が 何処かしこへ、
 君に似合っていて、軽々しく持ち運ばれた明日は、
 おもちゃの荷台に連れて電池が切れるまで走り続けたりできるように。

 溶けずに残る唐辛子の惑星を グラスの糸口に食紅と一緒に注いだり、きみとぼくの隙間を埋めて狂ったような、てのひらの生命線を描いたり。三半規管がまじろぎを泳がせたこれが酩酊してる愛人関係だとして、縺れた行き先が鸚鵡返しだと申せば 茹だる残骸が齎すものは自白を装う
 腐食した燻りであっても 鍋の底に転がされた甘栗の棘の名残でも、

 囚われたままのビニル袋に反転した蝶蜻蛉が、夢をみているかもしれないなんて 救われもしないまま。これが泳ぎつかれた愛玩用淡水魚の 美しい死にざまと言えるのだろうか。

 喋々《ちょうちょう》
 もう黙ることの成らない螺子巻き式ほほえみの行く先に舌触りの死んだ唄を乗せては嘔吐く。
 あいしてるだなんて古臭い哀悼に絆されては此処にいつ、ボクらは入るのだろう。
 さめざめと 流されては 朧月よ。なあ、孔の閉らない眼窟で更に殺してくれ。
 夢の宴に秘かに寄せる 青いだけの海の底まで、
 腰掛けるが華々しくて 何処を向いても君の彩。腐った人魚は痛々しくて 息があぶくに昇る前に。明日はきっと 僕の物語にしかならない、満たされた腹を割いても 泡沫しか作り出せない
 夢のような臓物に 食い尽くされた未知を庇って。

 夢は都合の女の子だって 我が身が生み出した分身、アナタ 今度は何を除くの。

 形が揺らぎ続ける、見つからないものを求めては、愛とか情とか 答えのない心を信じて ちょっとの隙間を埋める  浮いたり沈んだりの夢の中を つかみ損ない 此処がどこなのかわからない。繋ぎ止めるほどの鎖がなく この腕はいつだって空虚な躯を作り出す 軽くて重い 透明な躰が 濁っている 今が 美しく見えるみたいな気がしているだけで、それでも私は、宵に感けて、舞い続けられるのです。

(siteるだけの恋人たちくらんだいまにおもう)


自由詩 眩瞑 Copyright あらい 2020-09-04 19:11:53
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