麦茶の味 
服部 剛

日頃ぐうたらな僕が 
一念発起して 
庭の草をむしり始めた

夏の太陽はぎらぎら笑い
ぽたり、ぽたり
したたる汗は目に沁みる

草のむしれる感触に
無心で熱中しながら、熱中症にならぬよう
傍らに置く、長い水筒 

このささやかな労働も
今、調理の厨房で働くパートの妻と
支援学校で息子を介助する先生と 
街の何処かで汗ふく友と
繋がっている気がして 
次から次へと、手は草々をむしり 
ひろがってゆく土の面積 

ふぅっと一息ついた頃
草臥くたびれた男の影も陽炎かげろうにゆらめき 
風はそっと過ぎて

水筒の蓋を開けて、飲む 
冷えた麦茶はいつになく…うまい  






自由詩 麦茶の味  Copyright 服部 剛 2020-08-31 17:12:28
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