道草次郎

ただ一つの言葉を言えないばかりに
君は長い長い詩を書く
ただ一つの言葉
それを君は覚えているかい?
君は君が詩を書く動機を
まだ覚えているかい?
君は詩を書くことで
気を紛らわす苦しみから目をそらす
君はまだ幼いから
詩を書くことを自分に許せない
詩の豊穣な世界に
生きることの
謎めいた
かなしみや壮絶や歓びを
認めようとしない
君は
君が言えなかったことを
言いたいだけだと
それを言ってしまったら
ランボーになるんだと
そんなふうな
青さを捨てられない
君は覚えているかい?
君があの人や
他の色々な人に言えなかったことを
君は
いつになったら
おとなになるんだろう
いつになったら
退屈なおじさんになれるんだろう
君はあの空の下に走っていって
ただ陽を浴びたり
ただ汗をかいたり
ただ笑ったりすればいいだけなのに
君はいったい
どこへいくのだろう
この先どうなってしまうんだろう
どうやって明日へいけばいいというのだろう君は
言えなかった言葉なんて
もう忘れてしまったんだろうか
君は長い長い詩を書く
君は自分のことを殺してしまうほど愛していく
叫んでいるだよ君は
それに気づいているかい?
君はもう何もかもとことん裸になって
書かなくてもいい詩を
長い長い詩を
書き続けるんだろう
君は13歳だ
君はランボーじゃない
ランボーよりずっと
猛々しく吠える隕石だ
絶望と綯い交ぜな
希望

それらはいつだって君の内側に発動する
発動するんだよ
そう信じていこう
元気にやっていくんだ
君は燃えるように生きるんだ
君はみずからを愛し
愛し愛し愛し貫き尽くすんだ

そして
いつか
炎の花束を
あの空に投げるんだ







自由詩Copyright 道草次郎 2020-07-29 18:48:55
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