夜はいい
道草次郎

夜はいい

家人がめくる新聞紙の音
県道を走るオートバイ
二件むこうの玄関ベル
ナツメ電球のだいだい色

夜はいい

電気の下のアイロン台
扇風機の弱
並んだい草のスリッパ
蚊とりマット

夜はいい

ノートが浴びる月明かり
掛け時計の夜光塗料
降り止まないこぬか雨
ブナの木に眠る大きい鳥

夜はいい

春は宵口
夏のねずみ花火
秋に夜ふかし
冬とは明けかけ


夜はいい

詩集をとじて
初めて知った息のしかた

七色よりも
暗がりという単一色
それはどこか希望に似ている



夜はいい








深海を泳ぐ
チョウチンアンコウ
誰かのもとへ
届けきらない愛を
灯し
水圧を
さまよう





自由詩 夜はいい Copyright 道草次郎 2020-07-24 17:36:23
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