・・まあ、そんな訳で、昔は虎を使っていたんだけれども、キミも想像つくだろう、強いて虎三匹に樹の周囲を円環を描くように疾走させると云うその製造方法の是非なんて、いまは自明だよね？　そう、やっちゃいけない。だから禁止された。しかし、これからトーストやパンケーキに何を塗れば良いだろう？　
　多くの製造会社が廃業するなか、パラケルスス社だけは独自に代替材料を模索していた。社長のフォン・ホーエンハイムは従来の製法がいずれ糾弾されることを予見していたんだ。そして、彼らが追究し発見した代替材料が「龍（ドラゴン）」だった。
　良く考えてみれば、龍の身体特徴が虎よりも円環運動に適していることは明らかだっていまは誰も疑わないが、当初物議を醸した。しかし、マッハで回転する龍は一匹で虎三匹分以上に生産性が良かった事からその製法は程なく受け入れられ、しかもパラケルスス社は敢えて特許も申請しなかったから多くの製造会社が参考・模倣して周知の様にそれがいまや普通だ。
　え？　何故虎はかわいそうで龍なら良いかって？　それは、幻獣には保護法が適用されないからさ。キミも知っているだろう、龍の角を粉末にした喉の薬を造っている有名な会社も既にあった。
・・さて、お待たせした。キミの昼ごはんのパスタが完成したよ。これは湯気が立っているうちに完食するのがお薦めだ。