心に引いた飛行機雲
樹 なぎ
梅雨にぽつんと挟まれた晴れの日には、
いつも同じ日を思い出す
きっと色々な光を浴びた記憶たちが、
今朝の紅茶のように綺麗に溶けて、
同じ日と、定義しているだけだけど
心はもう何もかもあの少年みたいな、
丸い世界の上に生きているんだって気づいて、
誰かに話したくて自転車を漕いだ時とは、
全く違うのに、
どんなに成長しても、
呆れるくらいこの宇宙で回っても、
ある日に集約された夏を忘れることは出来ない
それはきっと、誰もが同じなのだろう
本質的に同じだった私たちは、
この夏のように青く大きな球状の上で、
すっと伸びた、記憶の元に生きているのに、
どんなに言葉を積み上げても、
どんなに思い出を照らし合わせてみても、
重なり合うことはできない
誰の周波数にも存在するのに、
あの星々の光のように、決して、交わることは無い
夏の空気が全てを溶かして、
繋げてしまいそうなのに。
梅雨にぽつんと挟まれた、
おかしな晴れた日にはいつも思い出す
この記憶のありかは、きっとみんな同じだと
夏が特別なのは、
みんなが心に閉じ込めたあの日が、
飛行機雲みたいに脆く、繋がるからだと。