心に引いた飛行機雲
樹 なぎ

梅雨にぽつんと挟まれた晴れの日には、
いつも同じ日を思い出す

きっと色々な光を浴びた記憶たちが、
今朝の紅茶のように綺麗に溶けて、
同じ日と、定義しているだけだけど

心はもう何もかもあの少年みたいな、
丸い世界の上に生きているんだって気づいて、
誰かに話したくて自転車を漕いだ時とは、
全く違うのに、
どんなに成長しても、
呆れるくらいこの宇宙で回っても、
ある日に集約された夏を忘れることは出来ない

それはきっと、誰もが同じなのだろう

本質的に同じだった私たちは、
この夏のように青く大きな球状の上で、
すっと伸びた、記憶の元に生きているのに、
どんなに言葉を積み上げても、
どんなに思い出を照らし合わせてみても、
重なり合うことはできない
誰の周波数にも存在するのに、
あの星々の光のように、決して、交わることは無い

夏の空気が全てを溶かして、
繋げてしまいそうなのに。

梅雨にぽつんと挟まれた、
おかしな晴れた日にはいつも思い出す
この記憶のありかは、きっとみんな同じだと

夏が特別なのは、
みんなが心に閉じ込めたあの日が、
飛行機雲みたいに脆く、繋がるからだと。


自由詩 心に引いた飛行機雲 Copyright 樹 なぎ 2020-06-29 09:03:19
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