砂上の罪跡
あらい

 想像上の彼女たちは僕の陳腐な脳味噌状で雑に踊らされる非常に可哀そうなモノになり切れないのは残念ながら漏れ出しているから、ほらほら寄って集ってくる者たちは現実だろうか偽物だろうかもう区別すらつかないちゃらんぽらんなこの身はなにか可笑しくも何かに蝕まれていくようだった。

 あしはついているのか
 耳から垂れ流されるのは脳髄の損傷によるものだろう。過度にでもぶつかったらしい曖昧な旋律が海馬を歪ませ犯している。イロドリミドリのぎらついた好みは確かに身を沈めるには十分な濃度を齎していて。
 イカレテイル。
 と言われてしまえば納得もしようがどん底に窪んだ眼球では正しくは読み取れそうにない。耳は言うことを全く聞こうとはしないもので、きっと私の思うように介錯されているのだから、やはりこの身は死者が動かしているに違いない。
 ずりずりとにじりよる。
 未来の扉は、恐ろしく強張ったこの腕を引き寄せるが声を上げようとも果たして気づいてくれるものなのだろうか、私の声は正しく開かずの門を開かせるのだろうか。警鐘が鼓動に共振するのだが、彼女らはただ能面な微笑みを緞帳に揺るがせているろくでもない栄華にもならない、
 時に犯されると私は思うのだ。
 巻き戻らない快楽に奔らせるだけの夢精。
 くだらないときにこそ意味を持たせる欲の曖昧な悟りに酔っていければ、そうだな、阿呆で在りたかったのに何故であろうか。私は居場所を得ているのだ、囲われているという、これが現実であろうが無我であろうが、私は私を擁けそうにない。
 ただ零れた盃だけが全てを知っているとも。

 中に潜むは満月の微笑み、飲み乾されたものはついぞ生き続ける餓鬼に戻る。
 繰り返される愚考に効力は持たず、膨張と摩擦の介錯が繰り返され、らくだけをしらしめる。
 ひたりおかしてくれる、朝焼けを待ち望む、今日も雨の傍らに滑り落ちる褥に長るる身を堪える。
 私はただひとりであり、統べてである。
 孤独なようで内に秘めるものが溢れては爛れている、繰り返し蝕まれては息を吹き返す、電飾に犯された砂上の楼閣にて。

 毎夜拡がり続ける歪《ひず》んだ海図を知っているか、
 あれだけが天を覆いつくすときを私たちは待ち焦がれてならない。


自由詩 砂上の罪跡 Copyright あらい 2020-06-27 10:37:19
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