やわらかい牢獄
もとこ
降り続ける雨は永遠の化身
わたしたちは閉じ込められている
どこかで花の匂いがするけれど
確かめに行くことはできない
濁った窓の外から聞こえてくる
心を削り取る無数のノイズたち
に耳を傾けながら冷めた記憶を
色のない食卓で噛みしめてみる
わたしは雨の中で生まれ
いつまでも死ぬことがない
誰もが平等に与えられた
幻想の檻の中にいる限りは
あらゆる疑問文が満ちる部屋で
思い出せない音楽を待ち続ける
それ自体が罰であることに
気が付いてもすぐに忘れる
ふと在り続けることに飽きて
フォークを床に落としてみても
始まりも終わりもないこの雨は
やわらかい牢獄として降り続ける