あなたへ捧ぐ愛という愛
秋葉竹
ええ、いいわ。
ええ、もう、わたし、死にましょうか?
なぜ、悲しいうたばかり
流れるこの街で
くっだらない日常に
悩まされなければならない?
いつかみた、あの子の詩は
たやすくあたしの心をひれ伏せさせて
それでも、あの子も
この時代を生きてゆくのに
高っかいヒールはいて
足をぐねったりしているのだろう
あんなうたが、書けるのに?
漆黒の、細いハイヒールを
舗道につき刺すこころもちで
でも
あきらめてしまうだろう
弱い心を自ら悟って
だから そんなとき
ひとつの透きとおった、
涙が流れるのは
それはだれの涙なのだろうか?
月の、涙なのかもしれない
もう
くだらないうたは
くだらないと
言ってしまっていいんだよ
って
いや、あなたのではない
傷つかないで。
あの、
色情狂の、
うたのことだよ。
あなたのうたは
心に刻み込まれ
あたしの
女の子への
愛という愛を
のきなみ刈り取って
あなたに捧げさせたよ。
あんな
素晴らしい
レトリック、あたしの想定外の
天賦の才、
あたし、もしかして
あなたになら
なりたかったのかもしれない
この、
じぶんだけが好きだった
あたしがだよ?
じぶんより、好きな人ができたのなら
それを愛と呼ばずに
なんと呼べば良いのであろうか?
よ?
なんとも、呼べないでしょ?
愛、以外?
なら、愛、なんだ。
でも、あたし、
あなたに愛なんて
告げてはいけないしがらみがある
生きてるかぎり、
抜け出せないやつ。
ねぇ、あなた。
なら、ねぇ、あたしは、
素直に生きる
その素直さは、消え去ることなの。
ねぇ、あなた、
ええ、いいわ。
ええ、もう、わたし、死にましょうか?