ひとつ 肌へと
木立 悟




小さな傷に満ちた目で
火の曇 光の曇を見るとき
歌はひとつひとつ分かれて
近づくように遠去かる


既知と未知は窓に波打ち
生になじまぬものたちは
光をひとつ負うごとに
赦し 赦され
飛び去ってゆく


遠い棘を見つめている
じっと痛みを見つめている
空を抱くように響きわたる
もうひとつの空を見つめている


白の底にある惑い
十字の路をゆく明かり
飛び去る星を見つめている
傷と光を見つめている


光と光の違いを知ろうと
夜のなかに立つひとり
両目を両手でふさいでも
傷はしみる 光はしみる
いとしいまぶた
いとしい手


凍る水紋 凍る風紋
砕け散るまま降りそそぐまま
積もりつづける光のそのまま
ひとつ 肌へと着くごとに
前髪の奥のかがやきは
歌のありかをひとつ見つける









自由詩 ひとつ 肌へと Copyright 木立 悟 2005-04-12 06:43:08
notebook Home 戻る