虫の音
ミナト 螢

ギーギーギー
虫が鳴くと船が進むように
生まれたばかりの膜を破る
複雑だった僕等の言葉を
耳元で油を差す時は
シンプルな感情を孵化させて
奥まで届く方が美しい
風が届かない部屋に
散った呼吸が集まり
寝苦しくなるたびに僕等は
シーツの冷たい場所を探して
舵を取ろうとする
虫になったら涼しいだろうか
羽根を仰いで青が溶けるほど
空腹が心地よい夜の途中で
激しくて強くて勿体ない
君の体温に近付き過ぎた


自由詩 虫の音 Copyright ミナト 螢 2020-05-03 07:46:46
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