ウミホタル
ふじりゅう

冷たい手で溺れさせられて
海ほたるの震えが皮膚を傷つけて
何千の光が生み出す凪を
陸地から眺めるカップル

浮き輪を放り投げられて
君の横顔の汚れに気付いた
足音しか聴こえない夢の最中で
誰の悲しい目も見なくていいと思っていた
藻だらけの髪の毛を払って
君はいつでも弱虫だなぁ
だから今度はいのちのいない場所で
夢を見続けることにするよ

海ほたるはあらゆる面の
どこにいても必ず発光するけれど
君の汚れには全くいない、たぶん
鉄道を見ても赤ん坊のように
喜ぶ引き出しが開かない

弱虫の君、それではごめんね
君には好奇心しか残ってないから
焼き魚と目を合わせなくなったから
石を思い切り投げれば
なかまが震えて美しい光を出した
りんごのような頬で小細工を抜き出す
それは君への最期の配慮だった


自由詩 ウミホタル Copyright ふじりゅう 2020-03-08 23:59:47
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