決闘か人殺しか(あるいはみみっちい小競り合いか)
ホロウ・シカエルボク

辺りを見渡せば意図塗れの言葉を吐いてる魂の貧民窟に住んでるやつら
俺が笑っているのはお前らの自尊心がひどく間抜けで仕方がないからさ
いまその場で誰かをやりこめることしか頭にないんだろう
目先の価値を拾おうと目論めばその他のすべてを手に入れるチャンスを失う
そんなことこれまでに考えたことすらないんだろう

ピストルをふたつ調達してガンマンの決闘と洒落込もうか
それともリボルバーにひとつだけ弾を込めてロシアンルーレットやるかい
なに、判ってるよ、言い訳なんか考えなくていい
お前はいつだって本気の勝負なんか出来ないんだ、考えるまでもない
言葉で人を殴ろうとしかしないことが何よりの証明さ

お前らが欲しがってるトロフィーに俺は興味が無い
手にした途端に存在が黒ずむのが目に見えているからさ
ある種の共通認識によって築き上げられた栄光なんて
無から何かを作り出すことなどまるで出来ない連中がこぞって競う見苦しい頂点さ
どんな形であれ俺に関わろうとするなよ、魂を磨き上げるために俺はここに居るんだ

誰に何を進められたところで(これでいいか)なんて考えちゃいけない
本当に欲しいものが目に入るまでメニューをくまなく眺めるべきさ
長生きしてりゃひとつやふたつ取り戻せない瞬間だって必ずあるものだ
生きるってことにもう少し自覚的になるべきだぜ、機械人形みたいに
プログラミングにそって決まったことばかり繰り返してないでさ

百度掘り返せば百の金塊が見つかるわけじゃない、それは俺にだって判ってる
得るか得ないかだけで話をするといつしか見苦しい馬鹿だって囁かれるようになるさ
どんなものを求めたのか、その為にどんな手段を使ったのか
そこには暗黙の了解というものがいくつもある、ひとことで言えば
そこに誇りはあったのかっていう問いかけに即答出来るかどうかってことさ

繰り返すことが大事だ、いいかい、目的をもって繰り返すことだよ
意識は水だ、思考は地形だ、言葉はその中を流れる無数の大小様々な石だ
流れが途切れなければそれは次第に研磨されて独特の形状に生まれ変わる
それから必要な時が訪れるまでそこで流れを見つめ続けているのさ
俺はそれを拾い上げるタイミングを誰かに教えてもらったことなんかないよ

必要とされるある作業が円滑に進められるようになる、それは進化なんだ
生命としてひとつ上のステージにあがったというわけさ、もちろん
自分のやるべきことをきちんと理解していなければ進化でも退化でもない変化だ
頭で考える必要はない、すべての感覚がそれを求めていれば
どこかから投げつけられるささやかなサインは必ずキャッチすることが出来る

強く瞬きをしてお前らが成功と崇めている連中をまじまじと見てごらんよ
ぶくぶくと醜く肥えてまるで趣味の悪いオブジェみたいじゃないか
失って失って失った先にある成功という名の虚栄心のなれの果てさ
本気でそんなものに憧れてるっていうんなら、そうだな
いますぐにさっきのリボルバーを持って来て残りの弾を全部込めるべきだね

だから俺は真夜中に暗闇のことを何度も書き殴る、それはセンチメントなんかじゃない
そこに居る方がほんの僅かな光だって見つけることが出来るからさ
穏やかな舞台を用意して幸せについて語ることだけがポジティブだと考えるやつら
それは無難な手段を片っ端から並べて安心してるようにしか俺には見えない
そんな幸せをうたうことで周辺のやつらにどんなことを言ってもらいたいんだ?

俺の脳下垂体のギャング共はギリギリの遊びが大好きで毎日大騒ぎしてる
一発だけ抜かれたロシアンルーレットとかね、そういうやつ
おかげで俺の脳内は言葉の腐乱死体だらけだ、処理班たちは悲鳴を上げながら
彼らの酷く無意味な死についてあれこれと思いを巡らせる
それからそんな死は別にここに限ったことじゃないと気づいて震え上がるんだ

俺がこんなことを言うとお前はどの面下げてそんな口を聞いてるんだというやつが居る
俺が聞きたいのはどうしてそいつらは俺がすぐ上から話してると思えるのかってことさ
卑屈になる暇があるんなら本当に考えて動いてみることだね、それしかない
俺は俺が話すべきことを話しているだけさ、これまでずっと真剣に生きてきたからね
そうさ、やり返してくれりゃいいんだ、正当な美しい手段でね

俺はいつだって心からの拍手をする準備は出来てるんだぜ



自由詩 決闘か人殺しか(あるいはみみっちい小競り合いか) Copyright ホロウ・シカエルボク 2020-03-08 22:05:37
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