田舎の暮らし
ミナト 螢

痩せ細って来るこの町で
生活の音がそのまま聞こえる
人の気配と安心を握った
両手はもう何も持てないから
鮭の皮を残さずに食べるまで
帰れないような気がしていた
無駄なものなど何ひとつなくて
僕等はきっと綺麗事になる
包丁で切れる全ての命を
食べ尽くすために生まれたのに
残すことを美しいと信じた
言葉なんて小さな生贄だ
そこにあるだけで邪魔に思った
そこにないだけで不安に思った
脱がしてしまった下着みたいに
たんぽぽの首が風に飛ばされて
空が青いうちに探さなくちゃ


自由詩 田舎の暮らし Copyright ミナト 螢 2020-03-06 10:13:45
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