迅奈良と幣 (じんなら と ぬさ)
AB(なかほど)


生駒さんの餅まきで
みっちゃんは手を伸ばしとったけど
その手に餅は届かず
白い紙切れだけが絡んできた


帰り道

こんなんいやや
とちぎろうとしたころ
竜田川の迅奈良が顔出して

そのひらひらで
おっちゃんをさすってくれんかなあ

 っていうてきた


なんで

 って聞いてみたら

たまにな
誰かにひらひらで背中のほうさすってもらわれへんと
棘の毒が弱なってまうねん
おっちゃんに毒ないってなったら
かっこつかんねん
な、嬢ちゃん


力いっぱい
迅奈良の背中をさすったみっちゃんは
そのお礼に

とっておきにするんや

 って言われて棘を一本もらった


そのみっちゃんもな
今年はとびきり別嬪な巫女さんや
せやけど
とっておきを自分に刺してもうたんやで
あないなかみ憑かりにヒラヒラ振ってからに


餅はまだかいな


  


自由詩 迅奈良と幣 (じんなら と ぬさ) Copyright AB(なかほど) 2003-11-22 01:30:01
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