うさぎ
はるな



小学校にうさぎ小屋があった時代、少女していた。
アニメーションキャラクターに似せた前髪、宝箱で溶けてく紙せっけん。
春生まれは生まれつき体が咲いている。蕾んでる時間もなく滲んでて、体はいそがしくても気持がぼんやりだ。

これはむかしの話なんだけど、春で、寒かった。なぜ愛せないんだ、と男が言うので、黙っていた。簡単なことだろう、と言う男は、出席簿を抱えていて、その表紙が嫌らしく黒かった。
芽吹き、どんなにみがいてもうす汚れてる爪や、わざとはみだしていれるシャツ、全部のなかで、わたしだけいなかった。

なぜ愛せないんだ、と思うとき、全部がかなしい。
そうでなければならないことなど一つもないのに、
なにひとつ本当じゃないみたいにひかっている。


自由詩 うさぎ Copyright はるな 2020-02-19 15:23:29
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