草の原にうまれる
うみ

愛があふれて、こわれてしまう
はずれたとびらのようになった
わたしからこぼれていく
あなたへ、あなたへ、
(あなたへ?)

そこは草原だった
ひからびた、(あるいは、みずみずしく満ち足りた、)
まろびでたわたしは、
でんぐり返しをしながら
笑って、笑って


あなたがいた、そこに
手をひらいて  白いシャツを着て
あなたがいたの、そこに
朝焼けの終わるときの燐光めいた
ほのかなまたたきが
まつ毛を光らせる
湿って、青ざめた白い膚に
草の汁と 土の味を  しみこませて
あなたがいた


わたしは夜からさめて
わたしのからだのなかにある
とびらからうまれたの
それだからいまここにあるものは
わたしのすべて


からっぽのへや
風のおとがする
わたしはそこにはいない
いま うまれたから



自由詩 草の原にうまれる Copyright うみ 2020-02-09 15:37:26
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