葉牡丹の枯れる
アラガイs


引き出しの中にも眠る
掬われないまりうすの舵
印影の消えた朱肉をいつまでもはなさない
無駄に広がる玄関の扉開けば山河原の礎石が
角松と放置されたここには誰も居ないという証なのだ
盥いっぱいに三杯酢が盛られて
台所からレモンをきざむ俎板の音が残る
素早く真綿を入れ換える手捌き
炬燵蒲団の淡い紫が茜色の袢纏に和えあわさり
寝ぼけた祖母と母の大正色に染まる

ソワレポエムなどと言えば耳障りはよいのかも知れない
草丘からベルサイユに沿道を見下ろとき
畑には葉ボタンに彩られた朱肉の淡い群れ
これは革命から後に植え替えられた祈念日の跡
夕暮れをポシェットにぶら下げて歩く幼子の影なのだ
祖母が眠りなぜか母は松の枝を切った
わたしは後始末に追われ続けた
箪笥を開けば異臭さにも懐かしさがこみ上げてきて
土壁に埋もれた花びらの囲いは
翌一年のはじまりと終わりが
                    枯れ
         











自由詩 葉牡丹の枯れる Copyright アラガイs 2020-02-09 04:04:27
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